歯の神経を残せるかどうかの診断は医院によって違う
歯科にも専門があります。
お医者さんなら小児科、脳神経外科、内科、外科、神経科、心療内科、整形外科・・・と詳しく専門分野がわかれています。
「こういう症状の時には、内科、循環器科、脳外科・・・」と専門が分かれています。
そしてお医者さんの看板にも◯◯外科、◯◯内科、◯◯整形外科・・と患者さんにはわかりやすく標榜表示され紹介されています。
医科と同じように実は歯科にも専門があるんです。
それぞれの専門の先生が、それぞれの立場で診断、治療を行います。
同じ患者さんのお口の中の状態を10人の歯科医師が診た場合、
10人が10人、違う診断を行うことがほとんどです。同じではありません。
歯の予防を専門に行なう予防歯科歯の根っこの治療を行う保存科噛み合わせを専門に行う補綴科
見た目を専門に行う審美歯科
親知らずの抜歯、口腔癌の手術、顎の骨を手術したりなどを専門に行う口腔外科
歯医者さんにも専門分野、というのがあるのです。
しかしながら,医療広告に関する規制から,補綴科や保存科,インプラントセンター等看板に標榜できないように規制されており,一般の方にはわかりにくく,歯科はどこに行っても同じ診断をされるように勘違いされやすくなっています。
歯医者さんによって診断が違うというのは、こういうことを意味します。
誰が診断しても同じ診断じゃないの?と思われる方がほとんどだと思います。
しかし、歯科だけでなく、医科の世界においても、「A先生とB先生とC先生の診断はまったく違っていた」ということはよくありますよね。
ある先生の判断では
「歯の神経をいますぐ取って治療したほうがいい」
ある先生の判断では
「歯の神経を抜かずに残し、治療したほうがいい」
先生によって診断の基準が違うのです。
なので、
最初に誰にどんな診断を受けるか、そこがとても重要なポイントです。
興味深いエピソードがあるのでご紹介します。
吉本歯科医院にお越し下さった50代の男性Hさんです。
Hさんは過去に治療した部分が何度も痛くなり何度も治療を繰り返していました。
Hさんのようなケースは特別ではありません。
むしろ、国民の7割以上は同じようなお悩みの体験があるかと思います。
過去に治療をした歯が何度も何度もかぶせ物が外れたり、同じところが虫歯になったりということって経験ありませんか?
なぜなんだろう?と疑問に感じたことは、ありますか?
実は日本中で今行われている歯医者さんの治療の7割が、あなたが以前に治療した部分の再治療なのです。
「歯が痛い」
「歯がしみる」
「かぶせ物が取れた」
「歯が抜けそう」
などあなたが患者さんとなって歯医者さんに駆け込む理由のほとんどは、
過去にあなたが受けた治療部位になんらかの問題があって起こっている、
という事実をあなたはご存知でしょうか?
Hさんは、同じところが何度も何度も痛くなり何度も歯医者さんに通い治療を繰り返していました。
ある歯医者さんで
「悪くなっているのでこの歯はもう神経を取ってしまいましょう」
と診断されました。
「歯の神経を取る」ということにこれといって深く考えることもなかったのですが、
なんとなく腑に落ちないなあという思いがあったそうです。
そしてたまたま私共吉本歯科医院とご縁があり、東京の歯医者さんで治療中ではあったのですが診察にお越しくださることになりました。
「歯が痛い! でも、放っておいたら痛みが落ち着いた……。」
そんなことを繰り返していると、だんだん状態がひどくなり、歯医者さんに行ったら「歯の神経を取りましょう」と言われ治療したという体験、あなたにもありませんか?
私はHさんのお口の状態を詳しく診させて頂きました。
私の診断では、「歯の神経はまだ生きているので神経を取らなくても良い」という判断でした。
今までの医院さんでは「神経を取りましょう」と診断されました。
私の医院では「歯の神経を残す治療をしましょう」と診断しました。
この診断の違いによってその後の治療が全く違ってくるのです。
これが「診断が変われば治療は変わる」という事になるのです。
診断が変われば治療が変わる
「神経がもう死にそうなのでいっそ取ってしまいましょう!」と診断すると、
実は治療をする側としては簡単です。
神経が残っていると、触っても痛いので患者さんも痛がるし、嫌がります。
歯科医師にとって何よりも嫌なこと、それは自分が関わった患者さんが、痛い!と思うことです。
痛い=ヤブ医者と思われてしまいそうだから?です。
そんな馬鹿な!と思われるかもしれません。しかし、歯科医師だって人間です。
痛がられると嫌なのです。
また、「神経を取ってしまいましょう」というもうひとつの理由として「神経を残す治療」には技術が必要、ということなのです。
神経を残すための技術を診断する先生が持っているかどうか、
ということも実は大きなポイントとなるのです。
歯の神経を取るということはつまりはその歯は死ぬということを意味します。
心臓がバクバクと生きていた状態から内臓を抜いて剥製(はくせい)にしたという状態です。
生きている木の枝は細くても簡単には曲げても折れません。
枯れ木はすぐにポキッと折れてしまいます。
ですので、その歯はたとえ表面的に見た目は白くきれいな歯であっても神経を取っているので枯れ木と同じです。
強度は1/10まで一気に落ちます。
なぜなら神経を抜いているので歯に栄養や水分が届かないから、です。何か力がかかった瞬間にポロリ折れてしまうことも十分考えられるのです。
有り得ますよね?
だって、死んだ歯なんですから。
神経を取る=生きた歯から死んだ歯になるということをどれほどの人がご存知でしょうか?
知っていれば恐ろしくて早々簡単に「神経抜きますね」「ハイお願いします」とはならないはずなのです。
そんな、歯ぐらいで大袈裟な、とお思いでしょうか?
歯を軽んじる人はかならず将来歯で泣くことに、なるのです。
死んだ人を生き返らせることは絶対にできません。
しかし、死にそうな人を死なないようにすることはできるのです。
最悪の状態を、生きられる状態に復活させることはできるのです。
この違いです。