歯の神経を取ったらどうなるのか。メリットはほとんどなく、デメリットは多い。「枯れ木」になった歯の強度は約10分の1です
こんにちは。香川県高松市で歯の神経治療(根管治療)と咬み合わせを専門とする「吉本歯科医院」院長の吉本彰夫です。
「神経を取ったら、歯はどうなるのですか」
「神経を取れば痛くなくなるなら、そのほうが楽なのではないですか」
「神経を取る治療を勧められましたが、迷っています」
このようなご質問を、当院では多くいただきます。そして、そのほとんどの方が「神経を取ることにも、それなりの良い面があるのだろう」とお考えです。しかし実際に口の中を拝見していると、神経を取るメリットはほとんどなく、デメリットのほうが多い、というのが私の考えです。
今回は、歯の神経を取るとその歯に何が起きるのかを、メリットとデメリットに分けて整理し、神経を取るかどうかを判断する前に確かめておきたいことをご説明します。
神経を取った歯は「死んだ歯」になります
まず、いちばん大切なことからお伝えします。歯の神経を取ると、その歯は「死んだ歯」になります。
歯の中は、トンネルのような空洞(根管)になっていて、そこに神経と血管が通っています。神経を取るということは、同じトンネルの中を通っている血管もいっしょに取り除くことです。血管がなくなれば、その歯には栄養が届きません。
枯れ木と同じ状態です
私はこれを、患者様に「枯れ木と同じ状態」とご説明しています。枯れ木には栄養が行きません。だから、少しの衝撃で簡単に折れてしまいます。
- 生きている木の枝は、曲げてもしなって戻ります
- 枯れて乾いた枝は、太くても、少し曲げただけでポキンと折れます
- 枯れた枝は、皮がはがれ、色も黒ずんでいきます
神経を取った歯にも、これと同じことが起きます。
神経を取るメリットは、ほとんどありません
「神経を取る」ことのメリットとして挙げられるのは、事実上ひとつだけです。痛みを感じなくなる、ということです。
痛くて眠れない、しみて食事ができない。そういうときに、神経を取れば痛みから解放される。これは一見、大きなメリットのように思えます。
しかし、痛みやしみる感覚は、自分の体が自分に出してくれている警告です。「これ以上この歯を放っておかないでほしい」「これ以上この歯に無理をかけないでほしい」という合図です。神経を取ると、この警告を二度と受け取れなくなります。痛みがなくなることは、メリットであると同時に、いちばんのデメリットの入口でもあるのです。
神経を取るデメリットは、たくさんあります
一方で、神経を取ることのデメリットは数多くあります。当院で拝見していて、特に大きいと感じるものを挙げます。
強度が約10分の1に落ちます
神経を取った歯が耐えられる力は、生きている歯のおよそ10分の1程度まで一気に落ちると考えています。奥歯には、男性で200キロ、女性でも100キロほどの力がかかると報告されています。生きている歯なら受け止められたこの力を、枯れ木になった歯は受け止めきれません。食事中に突然割れてしまった、というご相談は少なくありません。
警告が届かないまま、悪化が進みます
痛みを感じないため、その歯に無理な力がかかり続けても気づけません。気づかないうちに歯が割れ、根の周りの骨が溶けていきます。この段階で「残したい」とご相談いただいても、残す手立てがなくなっていることがあります。
色が黒ずんでいきます
枯れた枝が黒ずむように、神経を取った歯は徐々に黒っぽく変色していきます。前歯であれば見た目の問題にもなります。
治療のあとも、痛みが続くことがあります
奥歯の神経の入口は、教科書では3つとされていますが、実際には4つ目、5つ目がある方が珍しくありません。取り切れていない神経や、見つかっていない入口に菌が残れば、神経を取ったはずの歯が痛み続けることがあります。神経を取れば終わり、ではないのです。
元には戻せません
そして、神経は一度取ってしまうと、元に戻すことはできません。取るかどうかの判断は、その歯の一生を左右します。
神経を取る前に、当院が確かめていること
「痛いから神経を取る」という判断は、一般的な処置として広く行われています。当時の判断としては珍しいことではありませんし、前の歯科医院を責める必要はありません。ただ、当院では、痛みやしみる訴えに対して、いきなり神経を取ることはしません。
なぜ痛むのか、なぜしみるのかを調べます
原因はむし歯とは限りません。咬み合わせの偏りで特定の歯にだけ力が集中し、その歯が痛んだりしみたりしていることも少なくありません。この場合、神経を取っても力のかかり方は変わらず、次はその歯が割れる、あるいは隣の歯が同じように痛み出します。咬み合わせの検査で、力のかかり方を確かめます。
神経を残せる余地があるかを見極めます
マイクロスコープ(手術用顕微鏡)で歯の内部を拡大すると、肉眼では神経まで達しているように見えるむし歯でも、神経との間に健康な歯質が残っていることがあります。当院では、神経に近い部分を削らず、薬で菌を死滅させ、特殊な接着で封鎖することで、神経を残すことを目指す治療も行っています。ただし、すべての歯で可能なわけではありません。歯科用CTで根と骨の状態を確認したうえで、残せる余地があるかを判断します。
メリットがほとんどなく、デメリットが多く、しかも元に戻せない。だからこそ、神経を取るかどうかの判断は、検査で状態を確かめてから行うべきだと考えています。
こんな方は一度ご相談ください
- 神経を取る治療を勧められて、迷っている
- 痛みやしみる原因を詳しく説明されていない
- できるだけ自分の歯の神経を残したいと考えている
- 神経を取った歯が、しばらくして割れたり欠けたりした
- 神経を取ったはずの歯が、まだ痛む
- 神経を取った歯の色が黒ずんできた
- 食いしばりや歯ぎしりを指摘されたことがある
ひとつでも当てはまる場合、問題は「痛みをなくすこと」ではなく、なぜその歯が痛むのか、神経を残せる余地があるのかが、まだ確かめられていないことにある可能性があります。
この記事のまとめ
✅ 神経を取ると血管もなくなり、その歯は栄養の届かない「死んだ歯」、枯れ木のような状態になります
✅ 神経を取るメリットは痛みを感じなくなることですが、それは体の警告が届かなくなることでもあります
✅ 神経を取った歯の強度は約10分の1に落ち、100〜200キロの噛む力に耐えきれず割れる危険が高くなります
✅ 色の変色、気づかないうちの悪化、隠れた根管による痛みの継続など、デメリットは多く、元には戻せません
✅ 神経を取る前に、なぜ痛むのか、残せる余地があるのかを検査で確かめることが大切です
よくあるご質問
Q1. 神経を取るメリットは、本当にないのですか?
A. 痛みを感じなくなる、という点だけはあります。ただ、それは体からの警告を受け取れなくなることでもあり、私はメリットと呼ぶには危ういものだと考えています。痛みの原因が何かを確かめれば、神経を取らずに済む方法が見つかることもあります。まず検査で原因を確かめましょう。
Q2. 痛くて我慢できないときも、神経を取らないほうがよいのですか?
A. 強い痛みを我慢する必要はありません。ただ、痛みを止める方法は、神経を取ることだけではありません。痛みの原因が菌なのか、力の集中なのかによって対処は変わります。まず原因を確かめ、そのうえで神経を残せるかどうかを判断します。
Q3. すでに神経を取った歯がたくさんあります。もう手遅れですか?
A. 手遅れということはありません。神経を取った歯は強度が落ちていますので、その歯にどれだけの力がかかっているかを確認し、割れる前に力の配分を整えることが大切です。まず咬み合わせの検査で現状を確かめましょう。
Q4. 神経を残す治療は、どんな歯でもできますか?
A. 残念ながら、すべての歯で可能というわけではありません。むし歯の深さ、根の周りの骨の状態、その歯にかかる力によって判断が変わります。だからこそ、マイクロスコープとCTで状態を確かめ、残せる余地があるかを判断します。
Q5. 相談に行ったら、その場で神経を取られてしまいませんか?
A. 当院では、初診でいきなり神経を取ることはありません。まず検査で現状を確認し、何が起きているのかをご説明したうえで、選べる方法をご提示します。治療を進めるかどうかは、そのあとでご本人に決めていただきます。
歯の神経を取るかどうか迷っている方へ
「神経を取りましょうと言われたが、本当にそれしかないのか知りたい」
「神経を取った歯を、これ以上悪くしたくない」
香川県高松市をはじめ、四国各地から歯の神経のお悩みを抱えた多くの患者様が、当院にご相談にいらっしゃいます。
吉本歯科医院では、今痛んでいる歯だけを処置して終わりにするのではなく、「なぜ痛むのか」「なぜその歯がこうなったのか」「これから先、噛む力をどう配分すれば残りの歯を守れるのか」という根本から診断を行います。歯科用CTで歯の根と周囲の骨の状態を立体的に確認し、マイクロスコープ(手術用顕微鏡)で肉眼では見えない歯の内部を確かめ、咬み合わせの専門医として力のかかり方を評価したうえで、現状で何が起きているのかを分かりやすくご説明し、選べる方法をご提示します。
神経は一度取ると元には戻せません。取る前の今こそ、確かめておく価値があります。どうぞお一人で悩まずに、まずは無料メール相談またはネット予約からお気軽にご相談ください。
診療時間は9:15〜13:00/14:00〜18:00、休診日は水曜日・日曜日・祝日です。ご予約のお電話は087-818-1118までお願いいたします(お電話でのご相談は承っておりません。ご相談は無料メール相談をご利用ください)。
院長プロフィール
吉本歯科医院 院長 吉本彰夫
九州大学歯学部卒業 歯学博士
(一社)日本歯科専門医機構認定 補綴歯科専門医
(公社)日本補綴歯科学会認定 補綴歯科指導医
日本接着歯学会認定 接着歯科治療専門医
咬み合わせと歯の神経治療(根管治療)を専門分野として、日々の診療にあたっております。

