歯科の治療には健康保険が使える「保険治療」と健康保険が使えない保険適用外の自由診療治療」の2種類があります。
保険治療と保険外治療はどこがどういう風に違うのか?長所と短所は何なのか?といったことは実際にはよくわからないという方がほとんどかと思います。歯科の保険治療と保険適用外の治療の違い、長所と短所、そして「私のこの歯の治療に保険は効くのだろうか?」ということについてお伝えします。
保険治療と自由診療(保険外治療)の違い
保険治療
現在の日本の保険治療とは健康保険が使える治療のことを主に指します。患者さんの費用負担は治療費の3割だけで済むことが多く安価です。
世界から見ると非常に安い費用で治療を受けることができます。保険治療の費用は全国一律です。
日本全国どこの歯科医院で治療を受けても費用は同じ金額です。そして日本全国どこでも同じ費用で治療が受けられるという素晴らしい制度でもあります。
保険治療の最大のメリットは「費用が安い」ということです。
しかし、治療方法や治療に使う材料、治療にかけられる時間に制限があるといった短所もあります。
保険治療には
①使っていい材料
②使う技術
③使う薬品
④時間
⑤回数
などすべてに関して細かく制約があります。保険治療は、治療方法や手順、治療に使う材料に細かいルールがあるため、決められたルール以上の治療は行えません。
例えば行政機関などに提出する書類をイメージして下さい。
書類には細かく規定がきまっていて素人が簡単に書類作成を行うのは困難です。
この書類には細かく規定が決まっています。
こういう状態の場合にはこのように治療しなくてはいけない
この場合にはこの薬を使わなくてはいけない
この場合にはこの治療法しか選択肢はない
歯の神経を抜きたくない、でも、この状態の歯では神経を抜くしか認められていない
このように細かい決まりが保険治療にはあるのです。
例えば、ゲームでは「アイテム」という武器があります。
10個くらい武器があります。
今、手元に10個の武器があるとします。
保険診療で使える武器は?と考えた時、おそらく1個です。
1個の武器でできることしか、できません。何ができるでしょうか?
これに対し自由診療で使える武器は無数にあります。自由で制約がないからです。
日々進化する最新の技術や材料を使ってあらゆる治療を行うことができます。
現在の日本の歯科の保険制度は、戦後間もない頃、国民の多くが、自分では痛みを取ることができない虫歯治療に対し、その痛みをいかに感じなくさせるかという考え方を基準にして作られているものです。
「国が認めている制度なんだから安心できて安全で快適な治療が受けられるんだろう」
と思われている方は非常に多いのですが残念ながらそれは過剰な期待です。
現在の日本で行われている歯科の保険診療とは「最低限の治療」とお考え下さい。
最低限とは、その字の通り「最低限」ですので、患者さん自身が感じるところの最低限という意味合いではありません。
例えば、入れ歯は嫌だからもっと快適なインプラント治療をしたい
とか
銀歯は見た目が嫌だから白い綺麗な歯に
とか
歯の色が気になるから審美的に美しいものを
とか
歯周病が怖いから歯の予防を
とか
金属アレルギーが怖いから金属同等な強度をもった歯にしたい
とか
そういった
歯を守る予防治療だとか、きれいに見せる審美歯科治療だとか、快適に咬めるようにする治療だとか、そういったものは現在の日本の保険制度では残念ながら認められていません。
そのため、「きちんと噛めるようにしてあげたいな」と思っても最新の治療法で治療できなかったり、金属アレルギーを起こさず強度も高く封鎖性もある高性能の材料を使うことができなかったりします。そして何より保険治療には治療時間はあまりかけられないという制約もありどうしても、妥協的な治療になってしまうこともあるわけです。保険治療でその場は安く治療が受けられたけれども将来的には歯の神経を取らないといけなくなったり、抜歯になってしまったり、全身の健康を損ねたりと、結果的に患者さんにとって最善とはいえない治療になることが多いです。
現在の日本の保険治療の特徴は
費用が安い
どこの歯科医院にかかっても費用が同じ
全国どこの歯科医院でも同じ治療が受けられる
という長所はありますが、
治療方法、材料、治療時間に制限があり、結果的に患者さんにとって最善の治療を選択できないという大きな短所があるのです。
保険外治療(自由診療)
保険外治療(自由診療)の最大の長所は
「最新の治療法で高性能の材料を使い、高度な技術で時間をかけ丁寧に丁寧に治療を行うことができる」「教科書的には抜歯しなければいけない,神経を抜かなければいけない状態の歯であっても明日壊れても良いので,とりあえず抜かずに被せをすることができる」
という点です。
自由診療(保険外治療)は健康保険が使えないかわりに、治療方法や治療に使う材料、薬品、技術、治療にかける時間が制限されることはありません。制約を受けないため最新の治療法で、お一人のお一人の患者さんを「快適な状態」にしてさしあげることができるのです。ただし健康保険が使えませんから、治療費の3割だけを負担すればよい保険治療とは違い、費用を全て患者さんが負担しなければなりません。そのため治療費は保険治療と比較すると高額になるのが一般的です。また歯科医師それぞれによって専門が違いますから当然ながら技術も違います.同じような材料を使用したとしても自由診療の価格は大きな差になります.
神経を残す治療であったり、歯を残せる治療であるとか、失った歯を自分の歯のように再現するインプラント治療であったり、外科的に削るのではなく薬で内科的に治療するであったり、歯並びを改善する矯正治療のような治療は現在の日本の保険治療では一切認められていません。
快適に過ごすであったり、見た目を良くするであったり、アレルギーの心配が少ないといったり、そういった治療は「それは病気ではない」という考えですのでそのような内容のものまでは保険では税金では負担できませんよということになります。
たとえば歯科の保険治療の例を取ってお話します。
歯の痛みを感じるのは歯の神経が生きているから、痛みを感じることができるのです。
だから、痛みを感じさせなくさせれば痛みは消えます。
痛みを感じなくさせれば痛いという自覚症状にはなりません。
だから、「歯の神経近くまでばい菌が到達して痛んでいる患者さんの場合には歯の神経を取りましょう」という治療法針になるのです。
歯の神経に近い部分の治療をしてギリギリのところで神経の治療をしても歯の神経が残るかどうかわからない。その場合には後で痛みがでて追加の費用が発生しにくいよう、すぐに詰め物ををしてフタをするのではなく一ケ月くらい様子を見て痛みがでていないことを確認した上で最終的な被せ物を作ってフタをして下さいねという考え方になるのです。
要するに突貫工事をしてはいけないということです。突貫工事とは「短期間で一気に仕上げる工事」の事を言います。
突貫工事をした場合は、あとから症状がでたり痛みがでたりした処置をまたやりかえたり別の治療を開始しなくてはいけない費用リスクがあるからそれは避けて下さいよ、いうことです。
患者さんは
「はやく治療をして下さい」
「はやく次の被せ物をして下さい」
「はやくフタをして下さい」というご希望があるかと思いますが、残念ながら保険治療を選択してしまうと
「神経の近くまで触る治療をした場合には最低1カ月は治療してはいけない」という保険の決まりがあるのです。
しかし、当然ながらお口の中は常にばい菌が存在する場です。
1日もはやく被せ物で封鎖してあげた方がいいわけです。
こういう治療計画は自由診療では可能なのです。
吉本歯科医院で使用している神経を残すために使う薬剤も保険診療では認められていません。
最新の技術を持ってすれば残すことができるかもしれない歯の神経であっても保険診療では「歯の神経を取りましょう」という診断しか選択することができません。
だから、日本では「歯がしみるからと歯医者に行ったら歯の神経を取る治療を受けた」という方が多いのです。
歯の神経を取ることはその歯は「死ぬ」ということを意味します。
保険外診療(自由診療)の特徴は
最新の治療が受けられる
高性能の材料、薬剤、技術を使える
治療時間の制約がないため丁寧な治療を受けることができる
患者さんにとって最善の治療が選択できる
保険治療と保険外治療(自由診療)どちらを選ぶのがいい?
結論から言うと、吉本歯科医院では自由診療(保険外治療)をおすすめします。お口の状態が非常によく定期的に歯の掃除に来院される場合であれば保険治療でも問題ないことはあります。一方で悪化した虫歯や進行した歯周病では、保険治療では残念ながら患者さんが満足のいく治療結果が得られないことがほとんどです。その場は痛みがとりあえず治まってもまたすぐに再発し、何度も虫歯治療を繰り返し、その結果、多くの歯を失ってしまう原因をお口の中に作り出します。保険診療で行う治療では「十分に噛めない」「見た目が悪い」「金属アレルギーを引き起こしやすい」ということは当たりまえです。虫歯や歯周病の再発が起こることも「あたりまえ」です。すべての治療を保険外(自費)治療にする必要はありません。しかしご自分の歯を生涯守っていかれたいと強くお考えの方は保険外治療(自由診療)を選択される方が、増えています。最低限の治療ではなく患者さんにとって最善の治療を受けて頂きたいと思っております。
治療スタート前に患者さんへお約束すること
吉本歯科医院では患者さんの症状やご希望に応じて保険治療と保険外治療(自由診療)のご説明をさせていただいております。これは患者さんに保険・保険外を問わず、どのような治療方法があるかをお知らせするためです。多くの方が「知らなかった」というだけで保険治療を選択し、その後多くの歯を失ったり、噛めない状態にはやくからなってしまったりということが起こっています。吉本歯科医院では保険外治療(自由診療)を無理にお勧めするようなことは一切ありません。ご安心ください。全ての患者さまに「選べる選択肢がある」ということを知って頂くことも重要な医療行為だと考えております。